世界に衝撃・・・カルロス・ゴーン逃亡!!
厳重な空港セキュリティーを、どうやってすり抜けたのか??
今も謎が多いのですが・・・
航空史上空前の怪事件・・・謎の男にアメリカ空軍やFBIが騙されました。
彼の前に、100%の安全などない!!
1971年、大型ジェット機の登場でアメリカの航空産業が華やかな時代を迎えていました。
11月24日、感謝祭前日・・・
感謝祭とは、アメリカ合衆国では11月、第4木曜の祝日です。
週末にかけて4連休になる州が多く、家族と一緒に過ごす祝日・・・
日本の正月のようなもので、大型連休ムード一色となります。
オレゴン州・ポートランド空港・・・ダン・クーパーという名で、搭乗券を購入した男が飛行機に乗り込んできました。
ダークスーツに、アイロンのかかった白いシャツ、黒いネクタイ、レインコートを羽織り、手には革張りのアタッシュケースを持っていました。
品の良いビジネスマン風の男は、客室最後尾の席につきました。
この男こそ、伝説のハイジャック犯・クーパー(自称)です。
というのが、一般的なハイジャック犯のイメージですが、クーパーは違いました。
常識を超えた鮮やかな手口で翻弄・・・!!
午後2時58分・・・クーパーを乗せたノースウエスト航空305便は、オレゴン州・ポートランドを出発!!
ワシントン州シアトルへ・・・飛行時間はわずか1時間足らずでした。
客室内にいたのは、定員の1/4程度の37名。
ほとんどは、学生やビジネスマンでした。
さらに、3名の客室乗務員がサービスを行っていました。
離陸して間もなく・・・最後尾座席のクーパーは、客室乗務員に声をかけました。
「君、ちょっといいかな? これを・・・」byクーパー
メモを手渡された客室乗務員、フローレンス・シャフナ―は、当時23歳、デートのお誘いと思い、慣れた様子でメモを読まずにしまおうとしました。
ところが・・・
「お嬢さん、メモを読んだ方がいい
でないと、とんでもないことになる」byクーパー
慌ててメモを開くシャフナ―・・・そこにはなんと、
”私は爆弾を持っている 隣に座ってほしい”
と書かれていました。
「お客様、爆弾なんて冗談でしょ?」byシャフナ―
クーパーは、アタッシュケースを開きました。
そこには、ダイナマイトらしき赤い筒、ワイヤーはバッテリーのようなものに繋がっていました。
本物??偽物??外見だけではわからない・・・!!
「さあ・・・メモを取ってコックピットに伝えてくれ
5時までに現金で20万ドル用意しろと
要求に従わなければ、爆弾を爆発させる」byクーパー
身代金20万ドル・・・現在の価値で120万ドル・・・1億3000万円相当でした。
シャフナ―は、クーパーの要求を急いでコックピットへ伝えました。
「管制塔、こちら305便、乗客の一人が当機を乗っ取った
犯人は爆発物を所持、20万ドルの金を要求している」byパイロット
午後3時13分、シアトルの管制塔はすぐさま警察へ通報!!
航空機のハイジャックは、州の管轄を越えた犯罪・・・そこで出番となるのが、連邦捜査局FBIです。
FBI・・・シアトル支局の捜査官たちは、305便の着陸予定地・シアトル空港へ急いで出動!!
当時事件を担当したジョン・デトラー29歳・・・。
この時、それまでのハイジャック事件と全く違うことに衝撃を受けました。
それまでのハイジャックは、たいていはキューバ亡命を目指す犯人によるものでした。
しかし、この時初めて多額な身代金を要求するハイジャックが起きたのです。
アメリカでは、1960年代後半からハイジャックが急増。
そのほとんどが、社会主義革命で国交断絶したキューバへの亡命を目的としていました。
航空会社は要求に従い、犯人を送り届ければ被害はありませんでした。
その為、キューバ急行と揶揄されるほど、軽い事件と思われていました。
とはいえ、爆弾の持ち込みという危険な行為・・・空港チェックは・・・??
当時は金属探知機もなく、空港での保安検査もやっていませんでした。
ナイフ、ピストル・・・どんなものでも持ち込めたのです。
事件が起こってからそれに対応し、セキュリティーを強化する・・・という歴史でした。
クーパーは、まだ空港セキュリティーが本格的でない・・・時代の先を行く手口で、いとも簡単に爆弾を持ち込んだのです。
ハイジャックされた305便を運航するノースウエスト航空・・・初めて直面する爆弾の恐怖に、身代金の要求になすすべもなく、従うしかありませんでした。
その上、関係者をさらに戸惑わせたのが、クーパーの意外な振る舞いでした。
客室乗務員たちからの情報では、彼女たちは一切危害を受けていません。
クーパーはずいぶんと礼儀正しく、凶悪犯とは程遠く、むしろビジネスマンのようだったのです。
機内の様子も、平常通りの静かなママ・・・
乗客たちも、まさか最後尾でハイジャックが行われているなど気付いていませんでした。
その上クーパーは、最初の爆弾を見せた客室乗務員のシャフナ―とこんな会話を・・・
「なあ・・・バーボンをもらえるかな?」byクーパー
「え??ええ、どうぞ」byシャフナ―
「ありがとう
釣りはとっておいてくれ」byクーパー
「ごめんなさい
会社の決まりでチップは頂かないことになっているの」byシャフナ―
ハイジャック中に、お酒を頼んでチップまで・・・??
この余裕に、客室乗務員もつられて和気あいあい。
この奇妙な状態について、乗務員たちは事件後の記者会見で証言しています。
「犯人は冷静で好意的でした
飛行機を乗っ取った以外は暴力も振るっていません
少し、いら立っていましたが、非情な振る舞いもなく、私にも失礼なことはしていません」
「犯人は、私たち乗務員を信用していたと思います
私たちが彼の要求を尊重していると彼は信じていました
なので、私たちも彼の計画を邪魔しようとは思いませんでした」
これこそが、クーパーの恐るべき手口・・・
犯行を起こしやすい状況を、自ら作り上げたのです。
不思議な信頼関係がありました。
クーパーは、ジョークを言ったり、バーボンを飲んでタバコを吸う・・・
まるで乗務員たちの側にいるかのように振る舞っていたのです。
午後5時24分・・・離陸から2時間半が過ぎていました。
身代金の準備が整い・・・305便、シアトル空港へ・・・。
着陸態勢に・・・シアトル空港には、警察、FBIが待ち構えていました。
午後5時・・・シアトル空港は封鎖され、異様なまでに静まり返っていました。
着陸してくるクーパーの飛行機を警察とFBIが、待ち構えます。
過去のハイジャックのデータから見ても、彼を逮捕できないとは考えていませんでした。
過去、ほとんどのハイジャック犯は、警察に突入され捕まっています。
今回も、シアトル空港着陸後が、逮捕のチャンス!!
FBIは、滑走路周辺とターミナルに狙撃手を配置し、万全の包囲網が敷かれました。
クーパーとFBI、いよいよ以上での戦いが幕を開ける・・・!!
午後5時39分・・・遂に、着陸!!
もはやクーパーは、敵陣の真ん中に飛び込んだようなもの・・・
ところが、305便は、狙撃手がいるターミナルから離れた場所に着陸。
さらに、ブラインドが閉まっていて、犯人を狙撃できない・・・!!
客室乗務員たちに降ろさせていたのです。
しかも、305便が止まった場所は、照明が明るく、視界の開けた場所でした。
FBIの突入を防ぐため、周囲を監視しやすいようクーパーがパイロットに指示していました。
続いてクーパーは、飛行機がすぐに離陸できるように給油を開始させます。
何も知らされないままの乗客は、怪訝に思いながらもいつ下りられるのか?と、待ち続けていました。
一方、飛行機へ近づくことが出来ないFBI・・・下手に突入すれば、爆破・・・??
チャンスは、身代金の受け渡しの瞬間!!
クーパーの死角に車を停め、前方の扉から捜査官が身代金を運ぶ航空職員になりすまし、隙をついて取り押さえる作戦です。
午後6時・・・いよいろ決行・・・!!
ところが、クーパーは自分の席から見える位置に停車を指示。
これでは、下手な動きがとれない・・・!!
飛行機から人影が・・・出てきたのは、客室乗務員のティナ・マックロウでした。
クーパーは、受け渡しに客室乗務員を使い、自分は窓から監視して突入を阻止。
見事に出し抜かれました。
操り人形のように客室乗務員を使い、クーパーは思いのままに犯行を進めたのです。
マックロウは、身代金20万ドルの入った袋をクーパーに渡します。
袋に手を入れ、金を確認するクーパー・・・目的の一つを達成し、今日紀元でした。
マックロウはこのチャンスを逃さず、大きな賭けに出ます。
冗談交じりでクーパーにこう切り出しました。
「お金、少しくれる?」byマックロウ
札束を差し出すクーパー・・・そこで、
「ごめんなさい、ノースウエスト航空では、チップは頂かないことになってるの
でも、乗客は降ろしていい?
あなたには、乗務員とこの飛行機があるわ」byマックロウ
「わかった、いいだろう」byクーパー
奇妙な信頼関係を利用し、マックロウは乗客の開放を約束させました。
午後6時10分・・・
乗客は解放され、バスでターミナルへ・・・
そこで事情聴収を受け、初めて飛行機が乗っ取られていたことを知らされました。
客室乗務員も、3人のうち、マックロウ以外の2人は解放されました。
残る人質は乗務員4名・・・!!
爆弾の脅威にさらされる人質が減ったことは、FBIにとって好都合でした。
残された乗務員を脱出させれば捜査官が突入できる!!
給油中、コックピットにFBIから無線が入ります。
「応答せよ
名案が見つかったぞ
コックピットの窓ガラスを外して、梯子をかけてやるからそこから逃げるんだ
全員揃ったら、連絡してくれ、窓を外す
犯人の野郎だけ、機内に残してやれ」by捜査官
ところが・・・全員揃いません。
「マックロウが・・・あいつの傍から離れないんだ」by機長
「悪いが君には離陸まで傍にいてもらう
もし、機長と一緒に逃げられでもしたら、かなわないからな」byクーパー
クーパーは、FBIに対して、用心深く先手を打っていました。
「食事を届けるという理由で、彼女をコックピットに呼び寄せることは出来ないのか?」by捜査官
「きゃ・・・それは試したが駄目だった
これ以上、犯人を刺激したくはない」by機長
FBIもまた、犯人を刺激することを恐れていました。
爆弾を爆発されれば、機内で誰かが死んでしまうかもしれません。
爆弾の危険性が、突入を慎重にしたのです。
誰も負傷者が出ないように、行わなければいけなかった・・・
みな、クーパーの戦略の前に、手も足も出なかったのです。
午後7時30分・・・
着陸から2時間が経ちました。
給油が終わり、飛行機は4人の人質とクーパーを乗せ再び離陸!!
一体、どこへ向かおうというのか???
FBIは、追跡に最強の協力要請をします。
それこそが、アメリカ空軍でした。
午後6時20分・・・
シアトル空港での給油中、クーパーが次の行先を告げました。
「これからメキシコシティーへ向かってもらう」byクーパー
行先を知ったFBIは追跡のため、最強の助っ人に声をかけました。
それは、アメリカ句軍への協力要請でした。
軍の戦闘機を2機送り込み、その旅客機を追わせました。
なぜなら、クーパーが何をするかわからなかったからです。
可能な限り、旅客機を見ていられる人が必要でした。
空軍の主力戦闘機F-106が追跡することになりました。
最高速度マッハ1.9、クーパーを逃しはしない・・・!!
午後7時39分・・・
クーパーを乗せた飛行機は、メキシコへ向けて飛び立ちました。
F-106戦闘機も離陸・・・旅客機の上と下を飛び、クーパーの動向を監視します。
離陸前・・・クーパーは謎の指示を出していました。
「ランディングギアを出したまま、フラップを15度に下げて飛べ」byクーパー
ランディングギアとは、地上で機体を支えるための車輪です。
飛行時は、格納しておくのが通常でした。
それを出したままにしろという・・・
フラップとは、期待の揚力を高めるための装置で、これを極端に下げて飛べというのです。
この謎の指示は何なのか・・・??
ものすごい抵抗になるため、速度はかなり減速させることが出来ます。
普段は、時速900キロぐらいの飛行速度が、時速200キロぐらいまで落とせるのです。
実際、ハイジャック機は、時速300キロで飛んでいたといいます。
さらにクーパーは、更なる謎の指示を出していました。
「高度3000mを飛べ」byクーパー
通常旅客機は、高度10000mを飛行します。
しかし、高度3000mを維持しろというのです。
通常より低い高度をゆっくりと飛ぶ・・・
子の異様な飛び方によるクーパーの狙いとは・・・??
クーパーは身代金の要求と同時に、驚くべきものを要求していました。
パラシュートです。
高度3000m・・・それは、酸欠にならない高さであり、スカイダイビングを行う一般的な高度でした。
まさか・・・本当にパラシュートで脱出しようというのか・・・??
しかし、民間ジェット旅客機では、パラシュート降下は不可能・・・!!
危険すぎる!!
しかし、クーパーがハイジャックした305便で使われていたのは、ボーイング727という機体で、これには他の飛行機にはない特徴がありました。
エアステア・・・飛行機が出発する時と、目的りについたとき使います。
真ん中から後ろの乗客は、この階段を使って早く下りることが出来るのです。
このエアステアを使えば、翼にぶつかることなくパラシュート降下が可能なのです。
クーパーは計算づくでした。
しかし、ジェット戦闘機に監視されている!!
脱出に成功しても、着地地点に警察が来てしまう!!
ところが・・・305便の余りの低速さに、戦闘機は旅客機を追い越していました。
その都度旋回しなければなりません。
監視の目を離す瞬間が・・・!!
パラシュート降下のチャンス到来!!
客室乗務員のマックロウに、最後の指示を出します。
「コックピットへ行くんだ
もう、客室には来るな
絶対にドアを開けるんじゃない」byクーパー
これで、客室にはクーパーただ一人・・・
身代金を体に縛り付け、パラシュートを装着。
自ら操作し、エアステアを降ろします。
ここで初めてクーパーに危機が・・・外は最悪の暴風雨、気温は氷点下7度、眼下は山沿いの森林地帯で、明かり一つありません。
スーツ姿のまま、10キロの金を抱えて飛ぶのは自殺行為でした。
しかし、ここまで綿密に計画をしてきたクーパーが、最後は大博打に出ます。
クーパーは闇夜に消えました。
午後10時15分、305便は給油のためネバダ州リノ空港に一旦着陸、操縦士が客室を確認します。
誰もいない・・・
ここで初めてクーパーが飛び降りたことが発覚したのです。
翌日の11月25日・・・けが人ゼロ、身代金奪取、そしてジェット旅客機からスーツ姿で脱出!!
前代未聞の犯行に、アメリカは驚愕しました。
クーパーは、どこへ消えたのか・・・??
脱出が発覚したのが、給油地のリノ。
この間で飛び降りたなら、推定範囲は1000km以上・・・
クーパーの降下地点を正確に割り出すために、FBIは乗務員たちに聞き取りを開始・・・。
客室乗務員は、エアステアが後方で開いたと思われる時刻を覚えていて報告してくれました。
気圧の変化で客室の突風が吹いたのです。
そこで、はっきりと確証はとれないものの、その直後に通過したエリアがクーパーが飛び降りた場所であろうと結論付けました。
シアトル空港離陸後の午後8時12分、一瞬機体が揺れました。
この揺れが、クーパーがパラシュートで飛び降りた瞬間であると考えられました。
FBIは、すぐさまハイジャック機の飛行ルートから8時12分頃の地点を割り出しました。
第一段階の降下地点から範囲を拡大します。
クーパーが降下したと推測された場所・・・それは、ワシントン州・ウッドランド・・・大自然が広がるカスケード山脈の森林地帯です。
しかも、効果予測範囲は、半径25キロにも及びました。
11月25日・・・大規模な捜索が始まりました。
ヘリコプター4機、捜索隊30名、地元警察も総動員されました。
パラシュートや身代金など、クーパーに関する可能性があるものすべてをさがしました。
しかし、大自然の山脈において広範囲の捜索は難航・・・
その上、12月になると、次第に雪に閉ざされてしまう・・・!!
こうしてクーパーはもちろん、証拠品も見つからないまま暗礁に乗り上げました。
同時に身元の特定も・・・犯行手口から、有力な人物像が挙げられます。
パイロットに的確に指示していたことから、航空関連の会社にいた人物か?
パラシュート降下から、元軍人か、軍でパラシュートに関わっていた人物なのか??
FBIは、退役軍人で、犯罪歴のある問題ある者の中から、パラシュート部隊所属の人物を洗い出しました。
しかし・・・決定的な証拠がありません。
1972年に事件発生!!
クーパーが、再び現れたのか??と、捜査陣は騒然となりました。
デンバーからサンフランシスコに向かうボーイング727が、一人の男にハイジャックされたのです。
犯人は身代金50万ドルを要求、しかも再び離陸したのち、パラシュートで逃亡・・・クーパーと手口がほぼ同じでした。
2日後・・・犯人が捕まりました。
この男がクーパーなのか??
しかし、顔が違うと、客室乗務員が証言しました。
また、事件当日にアリバイもあり、模倣犯でした。
以後、このような模倣犯が大量発生・・・
1972年、パラシュートを要求したハイジャックは15件発生し、全員逮捕されています。
依然、身元さえ判明しないクーパーの犯行は、まさに完全犯罪!!
模倣犯とはレベルが違う・・・一般市民の人気が高まっていきます。
人々は彼をたたえる歌を作り、毎年開催されるパーティーも、40年続きました。
かれの存在は、反体制運動に影響を与え、アメリカ文化の一部となったのです。
その人気は、Tシャツやマグカップ、フライングディスクなど様々な商品が販売されるまでになりました。
さらにクーパーは、小説や映画の題材となり都市伝説の闇のヒーローと成長しました。
こうした風潮を、捜査に当たったFBI捜査官は苦々しく思っています。
「彼のしたことは間違っているし、法を犯したのですから犯罪者です
だから彼は、国民的ヒーローとしてみなされるべきではないのです」
鮮やか過ぎる犯罪者が闇のヒーローになってしまいました。
今も、私たちの世界を翻弄しています。
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1971年、大型ジェット機の登場でアメリカの航空産業が華やかな時代を迎えていました。
11月24日、感謝祭前日・・・
感謝祭とは、アメリカ合衆国では11月、第4木曜の祝日です。
週末にかけて4連休になる州が多く、家族と一緒に過ごす祝日・・・
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オレゴン州・ポートランド空港・・・ダン・クーパーという名で、搭乗券を購入した男が飛行機に乗り込んできました。
ダークスーツに、アイロンのかかった白いシャツ、黒いネクタイ、レインコートを羽織り、手には革張りのアタッシュケースを持っていました。
品の良いビジネスマン風の男は、客室最後尾の席につきました。
この男こそ、伝説のハイジャック犯・クーパー(自称)です。
というのが、一般的なハイジャック犯のイメージですが、クーパーは違いました。
常識を超えた鮮やかな手口で翻弄・・・!!
午後2時58分・・・クーパーを乗せたノースウエスト航空305便は、オレゴン州・ポートランドを出発!!
ワシントン州シアトルへ・・・飛行時間はわずか1時間足らずでした。
客室内にいたのは、定員の1/4程度の37名。
ほとんどは、学生やビジネスマンでした。
さらに、3名の客室乗務員がサービスを行っていました。
離陸して間もなく・・・最後尾座席のクーパーは、客室乗務員に声をかけました。
「君、ちょっといいかな? これを・・・」byクーパー
メモを手渡された客室乗務員、フローレンス・シャフナ―は、当時23歳、デートのお誘いと思い、慣れた様子でメモを読まずにしまおうとしました。
ところが・・・
「お嬢さん、メモを読んだ方がいい
でないと、とんでもないことになる」byクーパー
慌ててメモを開くシャフナ―・・・そこにはなんと、
”私は爆弾を持っている 隣に座ってほしい”
と書かれていました。
「お客様、爆弾なんて冗談でしょ?」byシャフナ―
クーパーは、アタッシュケースを開きました。
そこには、ダイナマイトらしき赤い筒、ワイヤーはバッテリーのようなものに繋がっていました。
本物??偽物??外見だけではわからない・・・!!
「さあ・・・メモを取ってコックピットに伝えてくれ
5時までに現金で20万ドル用意しろと
要求に従わなければ、爆弾を爆発させる」byクーパー
身代金20万ドル・・・現在の価値で120万ドル・・・1億3000万円相当でした。
シャフナ―は、クーパーの要求を急いでコックピットへ伝えました。
「管制塔、こちら305便、乗客の一人が当機を乗っ取った
犯人は爆発物を所持、20万ドルの金を要求している」byパイロット
午後3時13分、シアトルの管制塔はすぐさま警察へ通報!!
航空機のハイジャックは、州の管轄を越えた犯罪・・・そこで出番となるのが、連邦捜査局FBIです。
FBI・・・シアトル支局の捜査官たちは、305便の着陸予定地・シアトル空港へ急いで出動!!
当時事件を担当したジョン・デトラー29歳・・・。
この時、それまでのハイジャック事件と全く違うことに衝撃を受けました。
それまでのハイジャックは、たいていはキューバ亡命を目指す犯人によるものでした。
しかし、この時初めて多額な身代金を要求するハイジャックが起きたのです。
アメリカでは、1960年代後半からハイジャックが急増。
そのほとんどが、社会主義革命で国交断絶したキューバへの亡命を目的としていました。
航空会社は要求に従い、犯人を送り届ければ被害はありませんでした。
その為、キューバ急行と揶揄されるほど、軽い事件と思われていました。
とはいえ、爆弾の持ち込みという危険な行為・・・空港チェックは・・・??
当時は金属探知機もなく、空港での保安検査もやっていませんでした。
ナイフ、ピストル・・・どんなものでも持ち込めたのです。
事件が起こってからそれに対応し、セキュリティーを強化する・・・という歴史でした。
クーパーは、まだ空港セキュリティーが本格的でない・・・時代の先を行く手口で、いとも簡単に爆弾を持ち込んだのです。
ハイジャックされた305便を運航するノースウエスト航空・・・初めて直面する爆弾の恐怖に、身代金の要求になすすべもなく、従うしかありませんでした。
その上、関係者をさらに戸惑わせたのが、クーパーの意外な振る舞いでした。
客室乗務員たちからの情報では、彼女たちは一切危害を受けていません。
クーパーはずいぶんと礼儀正しく、凶悪犯とは程遠く、むしろビジネスマンのようだったのです。
機内の様子も、平常通りの静かなママ・・・
乗客たちも、まさか最後尾でハイジャックが行われているなど気付いていませんでした。
その上クーパーは、最初の爆弾を見せた客室乗務員のシャフナ―とこんな会話を・・・
「なあ・・・バーボンをもらえるかな?」byクーパー
「え??ええ、どうぞ」byシャフナ―
「ありがとう
釣りはとっておいてくれ」byクーパー
「ごめんなさい
会社の決まりでチップは頂かないことになっているの」byシャフナ―
ハイジャック中に、お酒を頼んでチップまで・・・??
この余裕に、客室乗務員もつられて和気あいあい。
この奇妙な状態について、乗務員たちは事件後の記者会見で証言しています。
「犯人は冷静で好意的でした
飛行機を乗っ取った以外は暴力も振るっていません
少し、いら立っていましたが、非情な振る舞いもなく、私にも失礼なことはしていません」
「犯人は、私たち乗務員を信用していたと思います
私たちが彼の要求を尊重していると彼は信じていました
なので、私たちも彼の計画を邪魔しようとは思いませんでした」
これこそが、クーパーの恐るべき手口・・・
犯行を起こしやすい状況を、自ら作り上げたのです。
不思議な信頼関係がありました。
クーパーは、ジョークを言ったり、バーボンを飲んでタバコを吸う・・・
まるで乗務員たちの側にいるかのように振る舞っていたのです。
午後5時24分・・・離陸から2時間半が過ぎていました。
身代金の準備が整い・・・305便、シアトル空港へ・・・。
着陸態勢に・・・シアトル空港には、警察、FBIが待ち構えていました。
午後5時・・・シアトル空港は封鎖され、異様なまでに静まり返っていました。
着陸してくるクーパーの飛行機を警察とFBIが、待ち構えます。
過去のハイジャックのデータから見ても、彼を逮捕できないとは考えていませんでした。
過去、ほとんどのハイジャック犯は、警察に突入され捕まっています。
今回も、シアトル空港着陸後が、逮捕のチャンス!!
FBIは、滑走路周辺とターミナルに狙撃手を配置し、万全の包囲網が敷かれました。
クーパーとFBI、いよいよ以上での戦いが幕を開ける・・・!!
午後5時39分・・・遂に、着陸!!
もはやクーパーは、敵陣の真ん中に飛び込んだようなもの・・・
ところが、305便は、狙撃手がいるターミナルから離れた場所に着陸。
さらに、ブラインドが閉まっていて、犯人を狙撃できない・・・!!
客室乗務員たちに降ろさせていたのです。
しかも、305便が止まった場所は、照明が明るく、視界の開けた場所でした。
FBIの突入を防ぐため、周囲を監視しやすいようクーパーがパイロットに指示していました。
続いてクーパーは、飛行機がすぐに離陸できるように給油を開始させます。
何も知らされないままの乗客は、怪訝に思いながらもいつ下りられるのか?と、待ち続けていました。
一方、飛行機へ近づくことが出来ないFBI・・・下手に突入すれば、爆破・・・??
チャンスは、身代金の受け渡しの瞬間!!
クーパーの死角に車を停め、前方の扉から捜査官が身代金を運ぶ航空職員になりすまし、隙をついて取り押さえる作戦です。
午後6時・・・いよいろ決行・・・!!
ところが、クーパーは自分の席から見える位置に停車を指示。
これでは、下手な動きがとれない・・・!!
飛行機から人影が・・・出てきたのは、客室乗務員のティナ・マックロウでした。
クーパーは、受け渡しに客室乗務員を使い、自分は窓から監視して突入を阻止。
見事に出し抜かれました。
操り人形のように客室乗務員を使い、クーパーは思いのままに犯行を進めたのです。
マックロウは、身代金20万ドルの入った袋をクーパーに渡します。
袋に手を入れ、金を確認するクーパー・・・目的の一つを達成し、今日紀元でした。
マックロウはこのチャンスを逃さず、大きな賭けに出ます。
冗談交じりでクーパーにこう切り出しました。
「お金、少しくれる?」byマックロウ
札束を差し出すクーパー・・・そこで、
「ごめんなさい、ノースウエスト航空では、チップは頂かないことになってるの
でも、乗客は降ろしていい?
あなたには、乗務員とこの飛行機があるわ」byマックロウ
「わかった、いいだろう」byクーパー
奇妙な信頼関係を利用し、マックロウは乗客の開放を約束させました。
午後6時10分・・・
乗客は解放され、バスでターミナルへ・・・
そこで事情聴収を受け、初めて飛行機が乗っ取られていたことを知らされました。
客室乗務員も、3人のうち、マックロウ以外の2人は解放されました。
残る人質は乗務員4名・・・!!
爆弾の脅威にさらされる人質が減ったことは、FBIにとって好都合でした。
残された乗務員を脱出させれば捜査官が突入できる!!
給油中、コックピットにFBIから無線が入ります。
「応答せよ
名案が見つかったぞ
コックピットの窓ガラスを外して、梯子をかけてやるからそこから逃げるんだ
全員揃ったら、連絡してくれ、窓を外す
犯人の野郎だけ、機内に残してやれ」by捜査官
ところが・・・全員揃いません。
「マックロウが・・・あいつの傍から離れないんだ」by機長
「悪いが君には離陸まで傍にいてもらう
もし、機長と一緒に逃げられでもしたら、かなわないからな」byクーパー
クーパーは、FBIに対して、用心深く先手を打っていました。
「食事を届けるという理由で、彼女をコックピットに呼び寄せることは出来ないのか?」by捜査官
「きゃ・・・それは試したが駄目だった
これ以上、犯人を刺激したくはない」by機長
FBIもまた、犯人を刺激することを恐れていました。
爆弾を爆発されれば、機内で誰かが死んでしまうかもしれません。
爆弾の危険性が、突入を慎重にしたのです。
誰も負傷者が出ないように、行わなければいけなかった・・・
みな、クーパーの戦略の前に、手も足も出なかったのです。
午後7時30分・・・
着陸から2時間が経ちました。
給油が終わり、飛行機は4人の人質とクーパーを乗せ再び離陸!!
一体、どこへ向かおうというのか???
FBIは、追跡に最強の協力要請をします。
それこそが、アメリカ空軍でした。
午後6時20分・・・
シアトル空港での給油中、クーパーが次の行先を告げました。
「これからメキシコシティーへ向かってもらう」byクーパー
行先を知ったFBIは追跡のため、最強の助っ人に声をかけました。
それは、アメリカ句軍への協力要請でした。
軍の戦闘機を2機送り込み、その旅客機を追わせました。
なぜなら、クーパーが何をするかわからなかったからです。
可能な限り、旅客機を見ていられる人が必要でした。
空軍の主力戦闘機F-106が追跡することになりました。
最高速度マッハ1.9、クーパーを逃しはしない・・・!!
午後7時39分・・・
クーパーを乗せた飛行機は、メキシコへ向けて飛び立ちました。
F-106戦闘機も離陸・・・旅客機の上と下を飛び、クーパーの動向を監視します。
離陸前・・・クーパーは謎の指示を出していました。
「ランディングギアを出したまま、フラップを15度に下げて飛べ」byクーパー
ランディングギアとは、地上で機体を支えるための車輪です。
飛行時は、格納しておくのが通常でした。
それを出したままにしろという・・・
フラップとは、期待の揚力を高めるための装置で、これを極端に下げて飛べというのです。
この謎の指示は何なのか・・・??
ものすごい抵抗になるため、速度はかなり減速させることが出来ます。
普段は、時速900キロぐらいの飛行速度が、時速200キロぐらいまで落とせるのです。
実際、ハイジャック機は、時速300キロで飛んでいたといいます。
さらにクーパーは、更なる謎の指示を出していました。
「高度3000mを飛べ」byクーパー
通常旅客機は、高度10000mを飛行します。
しかし、高度3000mを維持しろというのです。
通常より低い高度をゆっくりと飛ぶ・・・
子の異様な飛び方によるクーパーの狙いとは・・・??
クーパーは身代金の要求と同時に、驚くべきものを要求していました。
パラシュートです。
高度3000m・・・それは、酸欠にならない高さであり、スカイダイビングを行う一般的な高度でした。
まさか・・・本当にパラシュートで脱出しようというのか・・・??
しかし、民間ジェット旅客機では、パラシュート降下は不可能・・・!!
危険すぎる!!
しかし、クーパーがハイジャックした305便で使われていたのは、ボーイング727という機体で、これには他の飛行機にはない特徴がありました。
エアステア・・・飛行機が出発する時と、目的りについたとき使います。
真ん中から後ろの乗客は、この階段を使って早く下りることが出来るのです。
このエアステアを使えば、翼にぶつかることなくパラシュート降下が可能なのです。
クーパーは計算づくでした。
しかし、ジェット戦闘機に監視されている!!
脱出に成功しても、着地地点に警察が来てしまう!!
ところが・・・305便の余りの低速さに、戦闘機は旅客機を追い越していました。
その都度旋回しなければなりません。
監視の目を離す瞬間が・・・!!
パラシュート降下のチャンス到来!!
客室乗務員のマックロウに、最後の指示を出します。
「コックピットへ行くんだ
もう、客室には来るな
絶対にドアを開けるんじゃない」byクーパー
これで、客室にはクーパーただ一人・・・
身代金を体に縛り付け、パラシュートを装着。
自ら操作し、エアステアを降ろします。
ここで初めてクーパーに危機が・・・外は最悪の暴風雨、気温は氷点下7度、眼下は山沿いの森林地帯で、明かり一つありません。
スーツ姿のまま、10キロの金を抱えて飛ぶのは自殺行為でした。
しかし、ここまで綿密に計画をしてきたクーパーが、最後は大博打に出ます。
クーパーは闇夜に消えました。
午後10時15分、305便は給油のためネバダ州リノ空港に一旦着陸、操縦士が客室を確認します。
誰もいない・・・
ここで初めてクーパーが飛び降りたことが発覚したのです。
翌日の11月25日・・・けが人ゼロ、身代金奪取、そしてジェット旅客機からスーツ姿で脱出!!
前代未聞の犯行に、アメリカは驚愕しました。
クーパーは、どこへ消えたのか・・・??
脱出が発覚したのが、給油地のリノ。
この間で飛び降りたなら、推定範囲は1000km以上・・・
クーパーの降下地点を正確に割り出すために、FBIは乗務員たちに聞き取りを開始・・・。
客室乗務員は、エアステアが後方で開いたと思われる時刻を覚えていて報告してくれました。
気圧の変化で客室の突風が吹いたのです。
そこで、はっきりと確証はとれないものの、その直後に通過したエリアがクーパーが飛び降りた場所であろうと結論付けました。
シアトル空港離陸後の午後8時12分、一瞬機体が揺れました。
この揺れが、クーパーがパラシュートで飛び降りた瞬間であると考えられました。
FBIは、すぐさまハイジャック機の飛行ルートから8時12分頃の地点を割り出しました。
第一段階の降下地点から範囲を拡大します。
クーパーが降下したと推測された場所・・・それは、ワシントン州・ウッドランド・・・大自然が広がるカスケード山脈の森林地帯です。
しかも、効果予測範囲は、半径25キロにも及びました。
11月25日・・・大規模な捜索が始まりました。
ヘリコプター4機、捜索隊30名、地元警察も総動員されました。
パラシュートや身代金など、クーパーに関する可能性があるものすべてをさがしました。
しかし、大自然の山脈において広範囲の捜索は難航・・・
その上、12月になると、次第に雪に閉ざされてしまう・・・!!
こうしてクーパーはもちろん、証拠品も見つからないまま暗礁に乗り上げました。
同時に身元の特定も・・・犯行手口から、有力な人物像が挙げられます。
パイロットに的確に指示していたことから、航空関連の会社にいた人物か?
パラシュート降下から、元軍人か、軍でパラシュートに関わっていた人物なのか??
FBIは、退役軍人で、犯罪歴のある問題ある者の中から、パラシュート部隊所属の人物を洗い出しました。
しかし・・・決定的な証拠がありません。
1972年に事件発生!!
クーパーが、再び現れたのか??と、捜査陣は騒然となりました。
デンバーからサンフランシスコに向かうボーイング727が、一人の男にハイジャックされたのです。
犯人は身代金50万ドルを要求、しかも再び離陸したのち、パラシュートで逃亡・・・クーパーと手口がほぼ同じでした。
2日後・・・犯人が捕まりました。
この男がクーパーなのか??
しかし、顔が違うと、客室乗務員が証言しました。
また、事件当日にアリバイもあり、模倣犯でした。
以後、このような模倣犯が大量発生・・・
1972年、パラシュートを要求したハイジャックは15件発生し、全員逮捕されています。
依然、身元さえ判明しないクーパーの犯行は、まさに完全犯罪!!
模倣犯とはレベルが違う・・・一般市民の人気が高まっていきます。
人々は彼をたたえる歌を作り、毎年開催されるパーティーも、40年続きました。
かれの存在は、反体制運動に影響を与え、アメリカ文化の一部となったのです。
その人気は、Tシャツやマグカップ、フライングディスクなど様々な商品が販売されるまでになりました。
さらにクーパーは、小説や映画の題材となり都市伝説の闇のヒーローと成長しました。
こうした風潮を、捜査に当たったFBI捜査官は苦々しく思っています。
「彼のしたことは間違っているし、法を犯したのですから犯罪者です
だから彼は、国民的ヒーローとしてみなされるべきではないのです」
鮮やか過ぎる犯罪者が闇のヒーローになってしまいました。
今も、私たちの世界を翻弄しています。
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