あるものが発見されるまでの手術は地獄でした。
あるものとは麻酔です。
それまでは、痛みにショック死するものや、手術を悲観して自殺するものもたくさんいました。
しかし、世紀の大発見”麻酔”のおかげで医療技術が大進歩します。
命をすくうことになった世紀の大発見・・・にもかかわらず、麻酔の第一発見者で歯科医のホレス・ウェルズを知る人はほとんどいません。

アメリカ・・・1844年のある日・・・ウェルズは奇妙な光景を目にします。
笑気ガスと呼ばれていた亜酸化窒素・・・これを吸うと突然暴れ出したり踊り出したり・・・その滑稽な振る舞いを楽しんでいた人たちです。
椅子にぶつかったことも気づいていない・・・足から出血しても・・・!!

「もしかして、これを使えば痛みなく虫歯を抜けるんじゃないか・・・?」

ウェルズは、自らが実験台になり亜酸化窒素を吸入、親知らずを抜いてもらいました。
全然痛くない・・・!!麻酔発見の世紀の大発見の瞬間でした。

「これをアメリカ中に広めたら、たくさんの命が救えるぞ・・・!!」

ウェルズは、医学界の権威の前で麻酔の公開実技を行います。
しかし・・・公開実技は失敗!!
窒素の濃度がいつもと違っていたのです。
大ウソつき、ペテン師・・・この失敗で、アメリカ医学会から完全に干されてしまいました。

ウェルズを慰めていたのは、弟子のウィリアム・モートン・・・。
しかし、その本音は・・・
「麻酔のかけ方は全部ウェルズに教わっている
 この技術を盗んで大金持ちになるぞ・・・!!」

実はモートンは、歯科医になる前は筋金入りの詐欺師で、悪行改めウェルズのもとで働いていましたが・・・
失敗したウェルズを見て、詐欺師の顔がよみがえりました。
ウェルズの失敗から1年後・・・
ウェルズの技術を盗んだモートンは、麻酔の公開実技を大成功させます。
亜酸化窒素と同じエーテルを使ったのです。
その結果、医学の歴史には麻酔の第一発見者としてウィリアム・モートンの名が刻まれています。
モートンは麻酔の特許を申請、国もこれを認めモートンの計画通りに・・・!!

しかし、アメリカ・メキシコ戦争(1846~48)で・・・負傷者の手当の為に特許を無視してエーテルを使い始めたのです。
他の医者たちも無断でエーテルを使用するようになった結果、モートンには一銭にも入ってきませんでした。
ショックのあまりモートンは、次第に精神が不安定になっていき、池に飛び込んで死んでしまいました。
享年48歳でした。

しかし、更に悲惨な最期を遂げたのは、麻酔の第一発見者ウェルズの最期です。
公開実技が失敗した後、麻酔としてクロロホルムを試し、歯科医として再始動します。
が、自らが実験台となってクロロホルムの効果を試すうちに、幻覚を引き起こすクロロホルム中毒に・・・!!
精神を病んだウェルズは、娼婦に硫酸をかけて逮捕。
その獄中で、自ら命を絶つのです。
密かに持ち込んでいたカミソリ・・・自らが発見したクロロホルムを吸い込んだ後、左足の動脈を切り裂いたのでした。

医学界史上最大の発見・・・麻酔・・・そこには2人の男の栄光と破滅の人生がありました。



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