国際社会から孤立した国・北朝鮮・・・謎に包まれた独裁国家です。
労働党機関紙は、英雄たる最高指導者を連日称えます。
まるで、時が止まったかのよう・・・
兵士の数は、世界第4位ともいわれ、三世代にわたるキム一族の冷酷な支配が続いています。
国連が厳しい制裁を行う中、どうして体制を維持できているのか・・・??

オランダ・ライデン大学のレムコ・ブロイカー教授によると・・・
北朝鮮の見た目と実態は異なります。
最高指導層の行動原理が象徴的です。
体制にとって最大の目標はキム一族のために金を稼ぐことです。
私の関心ごとは、金の調達方法です。
集めた金は、どこへ行くのか、どれだけ稼ぐのか・・・
北朝鮮は、私に対する告訴状をオランダ政府宛に送りつけました。
「最高指導者の威厳を傷つけた罪」・・・北朝鮮では死罪です。

核開発により、国際的孤立を深めた北朝鮮・・・
合法的な収入源を絶たれた政権は、違法な資金調達に打って出ました。
国連は、2006年以降、10回にわたって、北朝鮮に制裁決議を採択、専門家8人が監視します。
その活動内容は、メンバーの身の安全を確保する為に秘密です。
取材対応が許されたのはひとり・・・国連専門家パネルコーディネーターのヒュー・グリフィス

制裁は一面では大きな打撃を与えています。
石炭も、鉄鉱石も、亜鉛も、合法的に輸出できません。
経済を外国に閉じた国でも、外貨獲得は重要です。
北朝鮮の指導者にとっての問題は、次のどちらを優先するか・・・
核ミサイル開発か、国の経済発展か・・・!!

政権は、爆弾を選択・・・
2005年、核兵器の保有を公式に宣言!!
他国からの攻撃の抑止を名目に、国内の支配体制強化も図ります。

選ばれた者たちの街・・・ピョンヤン・・・
ゴミひとつない道路沿いに、真新しい高層マンションが立ち並びます。
都市に住めるのは、体制に忠誠が認められた一部の上流階級のみです。
地方からは、許可証がないと入れません。

ピョンヤンにある経済研究所のソン・ギュンチュル
外国メディアからの取材に応えることが許されています。

「完全な制裁など不可能
 我が国は、今も貿易で外貨を獲得しています
 制裁したければすればいい
 我々は、前進するのみ
 国の競争力を剣に変え、犠牲を厭わず、勇敢に突き進みます。」

北朝鮮への制裁は、かつてなく厳しいものです。
これほど広範囲に制裁を科された国はないでしょう
でも、効果はありません

北朝鮮から亡命した高官の多くは、政権中枢の隠し資産を預かる秘密機関の存在を指摘しています。
金日成と、その息子・正日が70年代に設置し、幅広い権力を与えた組織です。
キム一族の権力基盤を固め、核開発と、指導者の贅沢な生活を支えるのが任務です。
”39号室”と呼ばれています。

ピョンヤンの南・・・韓国のソウル・・・北朝鮮の元外交官だったコ・ヨンファンは、1991年に脱北。
その後、韓国国家安保戦略研究院の副院長を務めました。

「キム・ジョンイルが、朝鮮労働党の財務部門を「39号室」に改名したと言われています
 3階の9号室にあったからという説・・・設置を命じた日が、3月9日だったからという説もあります
 以来、39号室はキム一族の秘密資金を調達し、管理しています」byコ・ヨンファン

国連は、北朝鮮に対する制裁の履行状況も監視しています。
39号室ほどの組織なら、真っ先に制裁対象になってしかるべきですが・・・
39号室の名前を口にするのは、脱北者だけです。
国連が調査するのは、北朝鮮の銀行やダミー会社で、国外で活動し、稼いだ外貨を本国に送金する組織です。

39号室は、国外では存在しない名で、職員も特定できません。
そんな組織や要員は、制裁対象に特定できません。

アフリカ中央部にあるコンゴ民主共和国・キンシャサ・・・
1980年代から北朝鮮はここで外貨を獲得してきました。
米ドル紙幣を偽造するための印刷機を所有していたのです。
1ドル紙幣の1の文字を消し、100の文字を印刷します。
資金洗浄のからくりは簡単で、まずドルで現地通貨を買います。
これには、地元の闇両替商を使います。
1万ドル相当の札束を渡す際に、偽札を数枚しのばせてあります。
交換して得た現地通貨は、地元の銀行に入金するのです。
正規のドルで引き出せば、資金洗浄は完了です。
そのあと、ピョンヤンに運び、39号室につきます。

秘密裏に活動する39号室の資金集めは、世界各地に広がっています。
カンボジアにある世界遺産アンコールワット・・・毎年、250万人を超す観光客が、1億ドルの外貨を落としていきます。
遺跡の入り口である博物館が出来ました。
3Dでクメール王朝の歴史を紹介するパノラマ絵画が展示の柱です。
全て北朝鮮の画家の絵です。
63人の画家が、1年4か月をかけて完成させました。
博物館も、北朝鮮の人が建設しました。
国連制裁を迂回した北朝鮮は、建設の資金も賄いました。
その見返りに、最初の10年間の収益はすべて北朝鮮に入る・・・その後は、カンボジアと分け合います。
北朝鮮から来た運営会社のTOPは、カメラ取材を断りましたが、入館料だけで年に700万ドルになると話しました。
収益はすぐに倍増する見込みです。
北朝鮮とカンボジアは、数十年前から友好関係を維持してきました。
金日成とシアヌーク国王が親交を結び、経済協力の基盤を築きました。
国連の制裁決議を横目に、今日のビジネスに繋がっています。

博物館が閉まり、夜になると別の扉が開きます。
北朝鮮レストランは、撮影禁止・・・
店内は、常に予約でいっぱいです。
メニューには、レーメンやナマコなどの北朝鮮料理が並びます。
コース料理は、高いもので50ドル・・・カンボジアではかなりの高額です。
客は主に、韓国や中国からの観光客・・・
働く女性の多くは、ピョンヤンで芸術を専攻する学生です。
レストランの上の階で寝泊まりし、数年間敷地を出ることは許されません。
毎晩同じ時間に衣装に着替えショーの出番を待ちます。
北朝鮮レストランは、世界各国に130店・・・そのうち3店がカンボジアにあります。
収益は、年間数百万ドルにのぼると言われていますが、ウェイトレスに報酬はありません。
ドルは、ピョンヤンの秘密の金庫に直行します。

北朝鮮労働者は、世界中に派遣され、EU内・・・例えばポーランドでも働いています。
建築現場では、北朝鮮から来た出稼ぎ部隊がいました。
12時間のシフトを終えた労働者は、夕方バスで宿舎に戻ります。
彼等の行動は、24時間国家保衛省によって監視されています。
それでも、労働者の一人が実態を話してくれました。

「稼ぎに来たのにどんなに働いても全然だめです
 労働環境は悲惨で、自由もない・・・
 狭い部屋に、大勢詰め込まれて暮らしています
 賃金の殆どが国に吸い上げられ、手元に残るのはわずか・・・
 30代だし、故郷に妻子もいる・・・
 収入はないに等しいのに、妻と子を思うと続けざるを得ない
 ほかに選択肢はない」

熟練工をポーランドの造船所や建設現場に派遣して、外貨を稼ぐ北朝鮮・・・
奴隷となる労働者の家族は、人質として本国に残されたままです。
労働者の月収は、1万円ほど・・・
残りはすべてキム一族に吸い上げられます。
北朝鮮は、国際社会の目をかいくぐり、各国に労働者を派遣してきました。
その数、最大で15万人!!
およそ4万人がロシア、そして10万人が中国、さらにクウェート、マレーシア、カンボジア、モンゴル、オマーン、カタール、アラブ首長国連邦、そしてアフリカ諸国・・・
国連の制裁で、本国に送還されるはずでしたが、派遣は今も続いています。
専門家は、北朝鮮が年間10億ドルに達する外貨を、こうして得ているといいます。

そこでどう稼いだ金であろうと、すべて39号室につきます。
39号室は絶対的権限で、金の流れを管理します。

39号室は、どこにあり、どれだけの大金が流れ込んでいるのでしょうか??

韓国・ソウル・・・39号室で働いていたという男性に話を聞いてみると・・・
彼は、中国を拠点に外貨を密輸していましたが、その後亡命・・・重要な任務に就いていたため、北朝鮮から殺害予告を受けています。

「北朝鮮はもう、社会主義計画経済ではありません
 社会主義は、国家が食料と必需品を全国市民に供給するのが決まりです
 しかし、その役割は、既に放棄されています」

39号室と、ピョンヤンの資本主義的な体質を理解するには、歴史を振り返る必要があります。
1991年12月、ソビエト連邦崩壊・・・北朝鮮は、最も重要な貿易相手国を失います。
そして、金正日が指導者の地位についた1994年、飢饉が発生します。
90年代の大飢餓で、多くの北朝鮮国民が餓死しました。
配給システムは崩壊、死者数は100~300万人!!
以来、農村部の住民は、自給自足で凌がざるを得ず、各地に闇市が出現・・・ジャンマダンと呼ばれました。
現在も、多くの闇市が並び、そのうち認可された400の市場は税金も支払っています。
売り買いされるのは、主に中国から来た食品や商品です。

「中国と北朝鮮の国境線は、1000キロ以上にもなるのに、8割近くは有刺鉄線もない
 国境付近の住民は、国の漢詩を逃れ、中国相手に活発に商売している
 この商売が、北朝鮮の闇市の基盤となっています」

北朝鮮政権は、闇市場を取り締まれません。
配給できないのに取り締まれば餓死者が続出します。
こうして経済が崩壊した社会主義国は、資本主義国家へと変質したのです。
2つの経済体制が混在した国へと!!



闇市場で暴利を得ているのが、ピョンヤンの政府高官です。
キム体制も、忠誠心を繋ぎ留め、その利益に預ろうと地下経済を許容しました。
幹部連中は、数年で裕福になりました。
贅沢品を売り、原材料を密輸し、不動産に投資・・・ドンジュ・・・金主と呼ばれています。

「僕にとっては、イデオロギーより金や社会的地位が大事でした
 39号室で働いたのも、それが目的です
 僕ら世代が、経済関連の仕事を好むのは当然です
 上の世代に比べて、富や地位にこだわるのです

 39号室の任務は、党のための資金集めです
 国家保衛省でさえ手出しできません
 外貨獲得という名目のもと、違法行為も即座に許可されました
 
 組織内での僕の肩書は、ある会社の”従業員”ということになっていました
 担当は、輸出業務でした」by元39号室輸出担当

ドイツ・ハンブルク・・・数年前まで、北朝鮮国営の保険会社・KNICがごく普通のアパートに支店を置いていました。
6人の職員が、ヨーロッパの大手保険会社と取引していました。
39号室には外貨保険を担当する部署があります。
その仕事は保険金詐欺です。
例えば、ロシア製の軍用Mi-8ヘリコプターを使った手口です。
老朽化したヘリを選んで再保険をかけます。
英国のロイズのような大手と保険契約を結びます。
最初につきの保険料を・・・例えば5000ドル支払う・・・
その後、ヘリコプターは爆破されるか、火災に見舞われます。
こうして保険金をだまし取るのです。
EUは、2015年、北朝鮮の保険会社を制裁リストに加えました。

「ポンコツの軍用ヘリを大金に変え、多くが勲章をもらいました」

こうした大金を、ピョンヤンに届ける手段とは・・・答えは簡単、外交官特権を使うのです。
39号室の職員の多くは、大使館や領事館で働いています。
北朝鮮の製品を外国に売り、外国製品を本国に送るのが彼らの仕事です。
外交旅券を使えば、札束を詰め込んだスーツケースでもノーチェック!!
金の流れが滞ることはありません。
北朝鮮大使館にとって外交は、二の次でしかありません。
本当の役割は違法に資金を調達することです。
武器や麻薬の密輸だろうと外交旅券には手を出してきません。

ベルリン・・・市の中心部にある北朝鮮大使館は、建物の一部をホステルとして貸出、月に500万近くの家賃収入を得ています。
大使館の敷地を商業目的で使うことは、外交のしきたりはもとより、国連とEUの制裁にも違反しています。
ドイツ当局は、閉鎖を求めていますが、営業は何年も続いています。
制裁の対象には、大使館による営業活動も含まれるでしょう。
軍事訓練や軍需品の提供が、北朝鮮大使館を通じて行われています。
特に、アフリカと中東で活発です。
中でもシリアは北朝鮮と違法な結びつきを強化しています。
北朝鮮軍との協力関係です。
シリアに独裁体制を敷いた先代のハーフェザー・アサド大統領と金日成は、1960年代から友好関係を結んできました。
中東戦争でイスラエルと戦っていたシリアに、北朝鮮は武器や弾薬を供与・・・今も重要な収入源です。
39号室は、かつての海賊さながら、偽の国旗と名前を付けた船を使います。
2012年から17年の間に、北朝鮮の船40隻がスエズ運河を通りました。
国連は、こうした船舶の一隻を2018年に取り押さえました。
積み荷は、特殊タイルとバルブ、化学兵器開発に使われるものでした。
タイルは耐酸性、弾道ミサイル計画にも用いられます。
船荷証券にはシリアの住所が書かれていました。
シリア科学研究調査センターSSRCのダミー会社の住所です。
弾道ミサイルと化学兵器の開発で、シリアの中核となる機関です。
そうして造られた化学兵器を、アサド政権は自国民に向けて使用してきました。
北朝鮮の科学者や技術者の協力が、シリアの化学兵器製作を支えていたのです。
アメリカ軍がシリアの化学兵器施設を爆撃した時、北朝鮮の要員も巻き込まれました。
その存在を、アメリカ軍が知っていたかは不明です。
シリアにおける北朝鮮の影響力は、過少評価されています。
シリアが北朝鮮から武器やミサイルを買えず、化学兵器の援助もなかったら、アサドは内戦に勝てなかったでしょう。

全土で街が破壊されたシリア・・・
悲劇とみるか、ビジネスチャンスと見るか・・・アサド政権は国際社会に対して多額の復興支援を要求しました。
労働力を提供するのは、北朝鮮です。
2019年6月・・・黒い契約が結ばれました。
その手の金が、ベンツなどの購入に充てられます。
何処からか、北朝鮮に流入し、制裁を潜り抜けています。
外貨はもっと重要な分野にも使われています。
優秀なハッカーの育成です。
1980年代に金正日が始めたプログラムで、数学やプログラミングに秀でた子供をハッカーに英才教育するのです。
資金の稼ぎ手としても、彼らは優秀です。
”ワナクライ”などのウィルスは、北朝鮮製だといいます。
史上最大のサイバー攻撃です。
無数のコンピューターが、150か国で使用不可能に・・・アメリカ政府は”ワナクライ”による犯行を、金正恩のサイバー部隊によるものと断定。

「北朝鮮ハッカーの動きをこの10年追ってきました
 以前は韓国の国防省や政府機関が主な標的でしたが、2015年以降、攻撃対象を世界の金融機関に移しています」byサイモン・チョイ

北朝鮮のインターネットアクセスは限られていて、使えるIPアドレスは、1000個ほどしかありません。
北朝鮮ハッカーは、それらを駆使して他国へ攻撃を仕掛けます。
ハッカーの数は、600人から1300人程度とみられています。
金融機関を襲うと自認するのは、北朝鮮の”ラザルス”と背後にロシアがいるとされる”カーバナック”だけです。
被害の8割は、北朝鮮の犯行で、ロシアは2割程度でしょう。

北朝鮮は、中上流階級を対象にした効率的な教育法を生み出しました。
ピョンヤンの中学校では、コンピューター技術者、科学者、エンジニアの卵たちが国の未来を背負って学んでいます。
コンピューターも学びますが、アクセスできるのは、北朝鮮版インターネットのみ・・・検閲されていない世界への接続は、厳禁です。
そうした中、北朝鮮史上初ともいえるデータ漏洩が起きました。

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ピョンヤンの200万件の住所と住民のデータが流出したのです。
コピーを入手した教授は、内容の分析を始めています。

「社会の現実を伝える情報は、今まで手に入らなかった
 ピョンヤンの経済活動を分析し、地図を書くことも可能になりました。
 以前は脱北者の記憶に頼って、建物の位置などを推定していました。
 今は、だれがどのビルで働き、どの企業のどんな部署がどこにあるのかまで分かる・・・」

データによれば、39号室の本部は、ピョンヤンの権力の中枢にあることが分かりました。
朝鮮労働党本部の目と鼻の先です。
6つの部局からなり、ピョンヤンだけでも数千人の職員がいます。
専用の自動車、幼稚園、ゴルフコース、ダチョウ牧場、専用の銀行までありました。
6つの部局はこれまでに、国内にある数百の企業を取り仕切っています。
鉄鉱石、ダイヤモンド鉱山、宝石工場、繊維工場などを運用し、輸出を管理しています。
外貨を稼ぐ企業は他にもあり、強制労働や武器の密輸、保険金詐欺を生業としています。
ルールはひとつ・・・39号室の名前を国外では決して口にしないこと・・・
見えない組織である限り、国連の監視の目は届きません。

あらゆるものを取り扱い、管理職だけで数千人いました。
従業員をあわせれば、数十万人です。
なんにでも手を染めました。
指示はただひとつ・・・”Make Dollars”ドルを稼げ・・・

北朝鮮は、変化を続けています。
貧しい社会主義国は、高度に発達した地下経済を持つ国家へと変貌を遂げました。
貧富の差は、開き続けています。
ピョンヤン市民が繁栄を続ける一方、農業人口の4割は、栄養失調に苦しんでいます。

データが証明したのは、39号室の存在だけではありません。
どの部署の配下のどの企業が外貨を稼ぐかまで証明しました。
キム・ジョンスク製糸工場・・・キム・ジョンウンの祖母の名を冠した工場です。
1600人の従業員の殆どが女性です。
国内産の蚕を使って、年間およそ200トンの絹糸を生産しています。
人手はかかりますが、高級品として高く売れます。
製品はすべて輸出に回りますが、輸出先はどの国なのか、責任者は口を割りません。
制裁は、39号室の収入に大きな影響を与えないでしょう。
製造ラインは365日、止まることはありません。
私が担当する工場では、国家の年間計画に基づき、年間数十万から数百万ドルを政府に納めていました。
そうした傘下の企業が、800~1000社と計算すれば、39号室が得る総収入は、容易に想像がつくでしょう。
繊維製品は、石炭に次いで2番目に重要な輸出製品です。
合弁事業ですることが多く、パートナー国は中国や東南アジアの会社です。

中国・丹東市・・・北朝鮮と国内を結ぶ玄関口は、国連制裁のむなしさを強調する場所でもあります。
国境の検問所には、毎日トラックの長い列ができます。
北朝鮮の輸出の9割は、中国を通過すると専門家は指摘します。
中国側では、繊維工場が立ち並び、北朝鮮からの労働者が数多く働いています。
中国企業は、北朝鮮の労働力を雇うのは、中国人より賃金が安いからです。
法制を担当する女性たちは、昼も夜も働き、敷地内で寝泊まりします。
家族から離れ、何年も監禁される人生です。

ブロイカー教授は、労働問題に詳しい弁護士や、貿易の専門家、データ分析官らと調査団を結成!!
ヨーロッパの服飾ブランドが、北朝鮮労働者を雇う中国企業と取引していないか、調べています。
検査結果には、驚きました。
北の労働者の中国での奴隷労働はもちろん、中国側が、北朝鮮の工場に外注し、製造まで請け負わせていたのです。
世界に名だたる有名ブランドのサプライチェーンに、北朝鮮の奴隷労働ががっちり組み込まれているのです。
製品の9割が、中国以外の場所で生産されているケースもありました。
欧米が、労働環境が適正か監視する工場では製造されていないのです。
正当な製造現場は、1割のみ・・・残りの9割は、北朝鮮で作られています。

ブロイカーのチームは、中国のある衣料品メーカーを詳細に洗いました。
”ヴァンデスト”です。
会社のサイトでは、低コストと豊富な労働力を歌い、国際的ファッションブランドが顧客に名を連ねています。
中国が服を作るための材料を、北朝鮮に送ります。
1か月後、完成した服が、同じコンテナで返送されます。
その衣服が、オランダ、ドイツ、アメリカなどに出荷されます。

2013年~16年にヴァンデスト社は北朝鮮に1000万ドル相当の生地や原材料を送りました。
同じ期間に、ヴァンデスト社は、2500万ドルの完成品を北朝鮮から受け取りました。
輸出先のひとつがアルマーニでした。
ヨーロッパでは、219ユーロで売られています。
これが、北朝鮮製だとは言い切れませんが、可能性は残されています。
アルマーニ社に見解を求めました。

「何年もの間、北朝鮮からの亡命者に証言を聞いてきました。
 強制収容所で輸出用の衣料品を作らされていたと・・・
 欧米の有名ブランド向けです。
 今回初めてデータから官僚機構の関与を立証できました。
 ピョンヤン郊外の州要所で行われる繊維の製造を管理しています。
 欧米の店舗で私たちが買う衣料は、強制収容所で作られたものかも・・・??
 死ぬまで収容所に閉じ込められた人々を働かせて作った・・・
 その恐ろしい現実に、私たちは加担しているんです。」

独裁体制を支える名も知れぬ幾多の労働者たち・・・
彼等の未来を犠牲にして作っているのが、指導部の贅沢な暮らしと、
西側の繁栄です。
金正恩は、常軌を逸した独裁者ではなく、国家を企業のように運営する冷徹なビジネスマンです。
そのビジネスを担うのが、北朝鮮39号室・・・私たちも、無縁ではないのです。

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